Department Roadmap — Vol.08

経営企画部門のAI活用ロードマップ
— 情報収集から戦略立案支援まで

部門別ロードマップ

「経営判断にAIを使うのはリスクが高い」——この懸念は、AIが「判断を下す」という前提から来ています。しかし、実際のAI活用で目指すべきは、AIに意思決定を委ねることではありません。AIが担うのは、意思決定に必要な情報の収集・整理・選択肢の提示です。最終的な判断は、常に経営者・経営企画担当者が行います。この役割分担を正しく設計することで、経営企画部門はより多くの時間を「戦略的思考」に使えるようになります。

「経営判断にAIは危険」という誤解

経営企画部門でのAI活用に慎重な姿勢をとる理由の一つに、「AIの判断を信頼してよいのか」という疑問があります。これは正当な問いです。AIは誤った情報を自信満々に提示することがあり(いわゆるハルシネーション)、事実確認なしに鵜呑みにすることは危険です。

しかし、この問題は「AIを使わない理由」ではなく「AIを正しく使うための前提」です。経営企画の文脈でAIを使う際に必要なのは、AIの出力を最終的な答えとして扱わず、必ず担当者が検証・補完するプロセスを設計することです。

「AIが調べてきた情報を人間が精査する」という設計にすれば、AIは膨大な情報収集・整理を短時間でこなし、人間はその内容の妥当性と戦略的示唆の抽出に集中できます。これは、情報収集に時間を取られ、分析・思考の時間が不足しがちな経営企画担当者にとって、業務の質を変える働き方の転換になります。

AIは「情報整理役」として機能する

経営企画部門の業務を大きく分類すると、「情報収集・整理」「分析・示唆出し」「資料作成」「会議運営」という4つに整理できます。このうち、AIが特に支援できるのは「情報収集・整理」と「資料作成」の領域です。

業界ニュースの収集・要約、競合情報の整理、市場動向のまとめ——これらは経営企画担当者が定期的に時間を使っている業務ですが、情報を収集すること自体に戦略的価値があるわけではありません。価値があるのは、その情報から何を読み取り、どう事業に活かすかを考えることです。AIが収集・整理の部分を担うことで、担当者はより本質的な仕事に時間を向けられます。

資料作成についても、事業計画書や提案書の骨格ドラフトをAIが生成し、担当者が修正・肉付けする形にすることで、作業の起点が「白紙から書く」から「素材を整える」に変わります。

経営企画AI活用3ステップ

経営企画部門のAI活用は、以下の3ステップで進めることをお勧めします。

Step 1:市場・競合情報の収集・要約自動化
最初に着手しやすいのが、定期的な情報収集業務のAI委託です。業界ニュース・競合他社の動向・市場データの収集と要約を生成AIが補助することで、担当者が毎週費やしていた情報整理の時間を削減できます。AIが整理した情報を担当者が確認・加工して経営陣に共有するフローを作ることで、情報共有の速度と網羅性が上がります。

Step 2:事業計画書・提案資料のドラフト作成
市場情報・内部データ・方針をAIに入力し、事業計画書や提案資料の骨格を自動生成します。完成品ではなく「たたき台」として活用することが重要です。担当者はAIのドラフトを起点に修正・深化させることで、ゼロから書くよりも早く、かつ論点の抜け漏れが少ない資料を仕上げられます。

Step 3:経営会議アジェンダ・議事録の構造化
経営会議の準備・議事録作成・アクションアイテム管理にAIを活用します。会議の録音や要点メモをAIが構造化することで、議事録作成の工数が削減されます。また、過去の意思決定の記録が構造化されていることで、次の意思決定の場で過去の経緯を素早く参照できるようになります。

「情報収集に費やしていた時間が戦略的思考に変わるとき、経営企画の仕事の価値が変わります。」

情報収集工数の削減が生む時間の意味

経営企画担当者が情報収集・整理に費やしている時間は、部門の規模や体制によってさまざまですが、週単位でみると相当な割合を占めているケースが少なくありません。その時間がAIの活用によって削減された場合、その時間をどこに使うかが重要な問いになります。

生まれた時間を単に別の情報収集に使うのではなく、「競合が取っている戦略の背景を深く考える」「自社の強みが発揮できる市場セグメントを絞り込む」「3年後のシナリオを複数パターンで描く」といった、人間でなければできない戦略的思考に充てることが、経営企画部門のAI活用が目指すべき姿です。

まとめ

経営企画部門のAI活用は、「判断をAIに委ねる」ことではなく「判断の質を高めるための情報整理をAIに任せる」ことから始まります。まず「週次の業界ニュース収集・要約のAI委託」という小さな一歩から始め、情報収集から分析・思考へと重心を移す経験を積み重ねることが重要です。事業計画書のドラフト作成・会議アジェンダの整備という3ステップを経ることで、経営企画部門は「情報整理の実務部門」から「経営判断の質を高める戦略パートナー」へと進化できます。

自社のAI活用状況を3分で診断できます。

無料で組織のAI成熟度を診断する  →

よくある質問

経営判断にAIを使うのは危険ではないですか?
AIは経営判断を下すのではなく、判断に必要な情報の収集・整理・選択肢の提示を担います。最終的な意思決定は経営者・経営企画担当者が行うという原則を守る限り、AIの活用はリスクではなく情報の質と意思決定の速度を高める手段になります。AIの出力をそのまま意思決定に使わず、必ず人間が検証・補完するプロセスを設計することが重要です。
経営企画部門でAIを使う最初の一歩は何ですか?
「週次の業界ニュース収集・要約をAIに委託する」ことから始めることをお勧めします。担当者が毎週手動で行っていた業界情報の収集・整理をAIが補助することで、その時間を分析・示唆出しに充てられるようになります。比較的低リスクで始められる業務であり、AIの活用効果を実感しやすい入口です。
事業計画書の作成にAIはどう活用できますか?
生成AIに市場情報・内部データ・目標数値を入力すると、事業計画書や提案資料の骨格ドラフトを作成することができます。担当者はゼロから書き起こす代わりに、AIのドラフトを修正・肉付けするプロセスで作業を進められます。ただし、AIのドラフトに含まれる数値や市場データは必ず人間が検証することが前提です。
経営会議の準備にAIを使うメリットは何ですか?
経営会議のアジェンダ作成・議事録の構造化・アクションアイテムの整理といった業務にAIを活用することで、会議前後の準備・まとめ作業の工数を削減できます。また、議事録をAIが構造化することで、過去の意思決定の記録が検索・参照しやすくなり、次の意思決定の精度を高める資産になります。
診断を受ける  →